脳梗塞は時間との勝負「time is brain」最新の治療方針

みなさんこんにちはマッスルDrです。

今回は脳梗塞の治療について解説します。
脳梗塞の治療で一番大切なことは「時間」です。

「Time is money(時は金なり)」にかけて、「Time is brain(時間が脳を救う)」とも言われるほど1分1秒が脳梗塞の治療では大切になります。

目次

以前脳梗塞の原因や症状については詳しくまとめていますので、そちらの記事も合わせてご覧ください。


○治療の遅れが患者さんの人生を奪う

 脳梗塞で脳細胞への血流が途絶えると1分間で約200万個の脳細胞が死ぬと言われています。
 シナプスでは140億個、12kmの神経繊維が失われます。

 そのため1分の治療開始の遅れですら、脳梗塞後の患者さんの社会復帰を遅らせ、場合によっては命を失う可能性もあります。

 脳梗塞の患者さんで、「1日様子を見てもよくならないからきました」と言って来院される方がいますが、すでに治療開始の時期を失っています。どのようにすれば手遅れにならないかを解説します。


○早く治療を開始するには

脳梗塞の症状を知る

 まず一番大切なことは、症状で脳梗塞と気づけるかどうかです。治療が間に合わない患者さんの中には脳梗塞を疑っているにも関わらず、確証が持てずに来院が遅れる方もいます。

脳梗塞の症状

  • 片方の手足や顔の麻痺や痺れ
  • 喋りにくい(構音障害、失語)
  • 視野の異常(視野欠損、複視)
  • 突然のめまい
  • 重症の場合は意識障害

最寄りの病院をあらかじめ確認

 あらかじめ脳梗塞になった場合を想像し、治療が行える病院を調べておくことも必要です。

 特に夜間や休日にも救急対応が可能であるかも重要です。

お薬手帳の重要性

 最新の治療を行う上で、薬の内服状況なども重要です。元々血液サラサラになる薬を飲んでいる場合は、脳梗塞の治療で薬が使えない場合もあるため、内服状況が確認できないと治療が遅れてしまいます。

 また、最近手術をしたことがある場合や消化管出血の既往がある場合も治療ができないため注意が必要です。


○最新の治療

 最も有効な治療法は4.5時間以内にtーPA(アルテプラーゼ)を投与する方法です。(血栓溶解療法
血液をサラサラにする強力な薬です。

 しかし効果が強力なため、脳梗塞発症後4.5時間以内でしか使うことができません。4.5時間を過ぎると脳梗塞で壊死した脳組織から出血を起こすリスクが上昇するため治療効果よりも出血のリスクが上回ってしまいます。

*出血や手術の既往がある場合や採血検査で異常がある場合も使えないこともあります。

 また、8時間以内でカテーテル(細い管)が辿り着ける比較的太い血管が詰まっている場合は、吸引カテーテルや金属のステントのカテーテルを使って、血栓を直接取り除く治療もできます。(血栓回収療法

 こちらも時間が経ち過ぎると再開通により、壊死した脳細胞に血流がいくことで出血するリスクが上回るため治療できなくなります。


○高血圧治療が最も有効な予防法

 今までは脳梗塞の予防は様々なことが言われてきましたが、近年のガイドラインで最も有効な予防法は”高血圧の治療”と言われています。

 135 /85mmHg以下に治療することで脳梗塞の予防が期待できます。

 今までは脳梗塞のリスクが高い人や無症候性脳梗塞に対しては抗血小板薬を使用し、血液をサラサラにしていましたが、出血のリスクが増加します。まずは高血圧の治療を行い、抗血小板薬は使用しない場合もあります。

 高血圧の治療は出血のリスクも下げるため最も重要な治療が高血圧の治療と発表されています。

 検診などで高血圧を指摘されている方は脳梗塞のリスクであり、心筋梗塞などの血管の病気全てのリスクになります。医療機関の受診をお勧めします。

*高齢者の方では血圧を下げすぎると腎臓の血流が落ちて腎不全になる場合があるので、急激には下げないように注意が必要です。外来での治療では徐々にさげるようにします。


まとめ

  • 4.5時間以内のtーPA投与(血栓溶解療法
  • 8時間以内のカテーテル治療(血栓回収療法
  • 病院に早くいくために、あらかじめ救急病院を確認
    脳梗塞で起こる麻痺や喋りにくさを認めたらすぐに救急要請
    お薬手帳も忘れずに
  • 脳梗塞の予防で最も重要なことは高血圧の治療

その他の病気に関してもまとめていますので目次から選択してご覧ください。

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*最新のガイドラインや書籍を参考に記事を作成し、最新の内容にアップデートしますが、医療は日々進歩しているため、中には間違った内容が含まれる場合があります。

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