ホルモンの司令塔!下垂体と機能異常をきたす下垂体腺腫

みなさんこんにちはマッスルDrです。

今回は脳の中心付近にある下垂体と下垂体に発生する腫瘍について解説したいと思います。下垂体の腫瘍の一部でホルモンを過剰に分泌することで、顎や手足が大きくなる先端肥大症を発症します。最近では女性芸人の方が発症し、手術を受けたことがニュースになっていました。

このようにホルモンが過剰になる場合、逆に障害されることで機能が低下する場合もあります。


○下垂体の機能

下垂体からはさまざまなホルモンが分泌されます。ホルモンの働きにより体の成長や電解質の調整、生理や乳汁の分泌などを調節します。

下垂体は脳の視床下部と呼ばれるところにつながっており、前葉と後葉と呼ばれる2つの部分に分かれそれぞれからホルモンが分泌されます。前葉のホルモンは視床下部から血流をとおして分泌され、後葉のホルモンは電気刺激によって分泌を調整されています。

成長ホルモンなどの一部のホルモンは1日の時間帯によって分泌される量がかわり、女性の生殖ホルモンなどは月単位で変化するため生理のリズムなどが調整されています。


○ホルモンの種類

前葉ホルモン

成長ホルモン:骨や筋肉の成長を促進し、肝臓や筋肉、脂肪での代謝を調整します。

甲状腺刺激ホルモン:甲状腺(体温調節や新陳代謝を調整)のホルモン分泌を促進します。

・副甲状腺刺激ホルモン:副甲状腺(骨の代謝を更新させて血液のCa濃度を上昇)のホルモン分泌を促進します。

・性腺刺激ホルモン:精巣や卵巣などの生殖器を刺激し、精子や卵子を発達させたり、テストステロンやエストロゲンなどのホルモンの分泌を促進します。

プロラクチン:乳汁の生成を促進します。

後葉ホルモン

バソプレシン(抗利尿ホルモン):腎臓に働きかけることで尿の排出を抑制します。

・オキシトシン:乳腺の筋肉を収縮させることで乳汁を排出させたり、出産の時に子宮を収縮させる機能もあります。



○下垂体腺腫

下垂体に出来る良性腫瘍の一つで、下垂体にできる腫瘍のほとんどを占めます。良性腫瘍であり比較的増大速度が遅く、手術を受けなくていい場合もあります。

腫瘍自体からはホルモンを分泌しない「非機能性」と過剰にホルモンを分泌する「機能性」に分けられます。

非機能性が40%ほどであり大部分を占めます。機能性はプロラクチンを過剰に分泌するものが30%成長ホルモンを過剰に分泌するもの(先端巨大症)が20%、その他のものが10%を占めます。

非機能性

ホルモンを産生しない細胞が増えるため初期症状は乏しいです。腫瘍が大きるなるに従って下垂体を圧迫し、下垂体機能低下症をきたします。また、下垂体の上には視神経が通っているため視野を障害します。特に両方の耳側の視野が欠けることが特徴です。(両耳側半盲

機能性

プロラクチン産生腫瘍(プロラクチノーマ):女性の場合、妊娠もしていないのに乳汁が出たり、月経が不純になり、無月経や不妊症になります。男性でも乳汁が出たり、女性化乳房になります。

成長ホルモン産生腫瘍:大人が発症すると先端巨大症になります。鼻や唇、舌、手足が大きくなることで顔が変わったり、靴や指輪が入らなくなったりします。また、舌が大きくなることでいびきが大きくなったり、夜間無呼吸になったりします。成長ホルモンが過剰に分泌されることで高血圧糖尿病になりやすくなり、心臓の病気で命を落とすリスクが上昇するため早めの治療を進めます。しかし10年ほどでゆっくり進む場合もあり、気づかない患者さんもいます。子供の場合は珍しいですが、異常に背が高くなる巨人症になります。


○検査・治療

検査

MRIやCT検査などの画像検査で腫瘍の大きさや形を調べます。MRI検査が最も精密に腫瘍を評価できます。

目が見えにくい場合は眼科の先生に詳しく視野や視力の検査を行っていただきます。ホルモンの異常に関しては血液検査や尿検査で調べます。

治療

手術で腫瘍を取り切る場合と薬でホルモンをコントロールする場合があります。

手術では一般的に内視鏡を使って鼻の穴から腫瘍を摘出します(経蝶形骨洞手術:ハーディー手術)。大きさによっては開頭での手術なる場合もあります。

視野障害先端巨大症クッシング病(甲状腺刺激ホルモン分泌)の場合は手術を優先します。

プロラクチン産生腫瘍の場合は薬でコントロールすることもあります。

再発する場合もあるため手術の後もMRI検査や採血検査を定期的に行う必要があります。


○まとめ

・下垂体からはさまざまなホルモンが分泌されます。ホルモンによって体のバランスを保っています。
・下垂体腫瘍のほとんどが下垂体腺腫であり、ホルモンを分泌しない「非機能性」とホルモンを過剰に分泌する「機能性」があります。
・非機能性は大きくなることで下垂体の機能を障害したり、視野を障害したりします。(両耳側半盲)。
・機能性の成長ホルモン分泌型は先端肥大症を発症させます。顔が変わったり、手足が多くなったりする。糖尿病や高血圧になることで心疾患のリスクが上昇するため手術が必要です。

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